一般社団法人 日本遺体衛生保全協会

IFSAは、エンバーミング(遺体衛生保全)の適正な実施と普及を目的としております。

医療従事者の立場から

亡くなった方を大切にするためにも、エンバーミングが不可欠です。

エンバーミングとの出会い

私は1964年米国ヴァージニア大学留学時に初めて エンバーミングを施された解剖体に接しました。その後1973年、デトロイトのウェイン州立大学(ミシガン州)でエンバーミングの方法を習得。 翌1974年、川崎医科大学に招かれ、日本に初めてエンバーミングを紹介しました。

日本への導入経緯

大学への導入経緯

1964年 米国ヴァージニア大学にて池田章氏(現・川崎医科大学名誉教授)が最新の方法でエンバーミングされた解剖体に接する。
1973年 米国デトロイトのウェイン州立大学(ミシガン州)にて池田章氏がエンバーミングの方法を習得。
1974年 池田章氏が解剖学主任教授として川崎医科大学に招かれ、医学教育・研究のため、優れたエンバーミングの技術を日本に初めて導入。
1974年〜 以来30年間に普及し続け、現在日本の医科系大学の65%から70%がこのエンバーミングの方法を採用しています。
ヴァージニア大学

ヴァージニア大学

 
デトロイトウェイン州立大学 (ミシガン州)

デトロイトウェイン州立大学 (ミシガン州)

 
川崎医科大学の解剖学遺体処置室

川崎医科大学の解剖学遺体処置室

 

葬祭関係者への普及経緯
(エンバーミング処置年間推移件数)

エンバーミングの普及件数グラフ

画像はクリックで大きくなります。

1988年

埼玉県川口市に日本初のエンバーミングセンターがオープン。
年間件数191件

1993年

IFSA(当時:遺体の公衆衛生に関する自主基準研究会)発足。
日本におけるエンバーミング自主基準を制定。

1994年〜

毎年2センターから3センターのペースでエンバーミングセンターが開設。

2017年

現在の施設は、24都道府県61施設。エンバーミング件数は、2017年集計42,760体。
累計で446,034件です。

2022年

現在の施設は、30都道府県83施設。エンバーミング件数は、2022年集計70,597体。

ご遺体の中まで防腐・滅菌するエンバーミング

病院での死後の処置(清拭)は表面のみの消毒で、ご遺体の中は防腐・ 殺菌されておりません。たとえば肺結核のご遺体の場合、体を動かすと口からガスが出て、その中に菌が含まれている可能性が高く非常に危険です。 これに対し、エンバーミングされたご遺体であれば血管系(動脈・静脈による血液の流れ)を利用し全身に防腐液を注入してあるので、ウイルス・ 細菌は殺されており、感染の心配はありません。

灌流式固定法

従来の日本の解剖学における防腐固定法

防腐液として使用されるホルマリン(5%から7%溶液)にご遺体を浸し、数日~数ヶ月間の時間を費やし、皮膚から薬品を浸透させ防腐処置を行う。この方法では、皮膚の表面から薬品が浸透するのみとなるため感染症の防御策としては、不十分となる。

現在の解剖学における防腐固定法灌流式固定法

灌流式固定法では、血管系を利用し動脈から防腐(固定)液を注入し、静脈から血液を排出するため、体内の隅々まで固定される。
  1. 注入・排出する動静脈を剖出する。(実例:大腿動静脈)
  2. 防腐(固定)前液を注入用ポンプで動脈に注入。血管内の凝固を軟化・流動化させ、静脈からの排出を容易にする。
  3. 防腐(固定)液を注入する。静脈からの排出は、遺体の状態を見て止める。
  4. 所要時間約2時間 感染源となるウイルス・細菌を殺菌し組織を固定
現在の解剖学における防腐固定法

エンバーミングの組織固定効果

灌流式固定法は、毛細血管まで防腐(固定)液を浸透させることができ、組織を完全に防腐・固定することが可能なため、解剖学をはじめ様々な医療の研究に活用されている。
小脳の組織顕微鏡写真

小脳の組織顕微鏡写真

頭部動脈の立体血管造影写真

頭部動脈の立体血管造影写真

手の皮膚の組織顕微鏡写真

手の皮膚の組織顕微鏡写真

骨髄(胸骨)の組織顕微鏡写真

骨髄(胸骨)の組織顕微鏡写真

資料提供:川崎医科大学 医学博士 池田 章 名誉教授
エンバーミングの登場はこれまで不可能とされていた組織顕微鏡写真や血管造影写真の撮影を可能とし、医療分野をはじめ様々な研究に役立ってます。

一般社団法人 日本遺体衛生保全協会

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